野心的なオーナー、フランソワ・ミジャヴィルさんの努力で、サンテミリオンのトップシャトーの仲間入りを果たしたテルトル・ロートブッフ。

「どうやらテルトル・ロートブッフがすごいらしい」との噂を聞いた当時、ちょうどボルドーへ行く機会があったのでボルドー中のワインショップを探し回ったことがありました。ところがボルドーでさえ、このシャトーのワインを見つけることができなかったんです。それもそのはずでテルトル・ロートブッフの畑面積はわずか6ヘクタール。ボルドーでは異例の小ささなんですね。

その後帰国して、ようやく日本でこのワインと対面できたのですが、あまりの衝撃に言葉を失ってしまったのを今でも覚えています。凝縮したメルローの甘い果実味を、20%のカベルネ・フランがエレガントな酸でしっかりと支え、シルクのように滑らかな喉越しの素晴らしい美味しさ。

モカやチョコレートのように心地よいほろ苦さを持つ後味も余韻もひたすら長く、ル・パンやオーゾンヌでさえ小さく見えてしまうような見事なワインでした。

カルト・サンテミリオンで有名なものといえば、ヴァランドローがあります。ヴァランドロー登場後は、みんなヴァランドローに続けと「ガレージワイン」と呼ばれる数々の小規模手作りワインが登場してきましたが、ただ濃厚なだけでテロワールのかけらも感じられないものも多く、今ではほとんどのワインが淘汰されてしまっています。

しかし、今でもテルトル・ロートブッフは残り、それどころかますます輝いています。テルトル・ロートブッフは、淘汰された他のワインと何が違ったのでしょうか?

テルトル・ロートブッフには優れたテロワールがあり、それがワインにしっかりと表れているんです!

テルトル・ロートブッフの畑はサンテミリオン・グラン・クリュ・クラッセの一つ、ラルシス・デュカスのすぐ近く。その周りには、パヴィやガフリエールなど、サンテミリオン・コートの名だたるシャトーが並んでいます。サンテミリオンは全体的になだらかな斜面ですが、この辺りだけ斜面が急で水はけがよく、南向きや南西向きの畑ばかり。石灰を含んだ粘土質の土壌のおかげでたっぷりの果実味ときちっと引き締まったミネラルを持ち合わせることが出来るんですね。