本書は、シェンカーによるベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタ第32番 op.111の批判校訂版、作品理解のための詳細な手引き等からなる。同校訂版は、当時それまでに刊行されていた校訂版と異なり、作曲者と直接かかわりのある資料を参照しつつ、随所で的確な判断を下している。しかも、作曲者の指示と校訂者の解釈が楽譜上で明確に区別されている点で、ビューローやリーマンの実用版とは大きく袂を分かつ。手引きは、作品の構造に関する注釈や具体的な演奏指南、他の版への批判を含む。判断の根拠や思考の過程を示しながら