ファエドは特殊な土壌
『ファエドは特別な地だ。谷が多く日陰の土地が多いトレンティーノにおいて谷が大きく開けていてトスカーナと同等の日照量が確保できる』実際、ファエドの下に位置するサンミケーレ・ディ・アディジェは、トレンティーノ・アルト・アディジェで最も気温が高いことで知られている。更に熱い夏場にはガルダ湖からの冷たい風がファエドの谷に吹きこむことで、葡萄は健康度を保ち香味成分を失わない。この地域の土壌は2億5000万年前のアフリカで起こった噴火で断層が縦に隆起した珍しい土壌になっている。氷山に押し出された石灰岩が主体の堆積土壌と、モルフィドと呼ばれる火山岩と粘土の重たい土壌が主体だが、この土壌と標高との組み合わせによって品種を選ぶ必要がある。ポイエル・エ・サンドリは現在6つの村にまたがって細かく畑を所有しており、各畑の個性に合わせた品種を栽培し、それらをブレンドすることでバランスを保っている。例えばパラディゾットと呼ばれる標高300mの沈泥土主体の石灰と粘土からなる堆積土壌からはロッソ・ファイエが生まれる。ドロミテ渓谷の白い石灰岩が主体で標高が750mを超えるパライからはミュラー・トゥルガウが生まれる。
独自の醸造技術
彼らは独自のアプローチで "葡萄そのものの表現” に挑戦している。例えば、収穫した葡萄を発酵させる前に冷蔵庫に入れて6度まで冷やし一晩置く。この作業は薬剤をほとんど使わずに育てた健康な葡萄には必ず存在する虫を除去する為のもので、果実内に忍び込んでいるハサミムシ(特にピノ・ノワール)は冷気に弱く冷えた果実から外に這い出してきて冷蔵庫内で死滅するそう。更に、ジャグジーのような装置を使いクエン酸を1%加えた水で葡萄を洗ってしまう。クエン酸は硫黄と銅を落としてくれるので、僅かに果皮に残った銅や硫黄も除去することができる。その際、野生酵母も50%程度落としてしまうが、雑菌も落とすので綺麗になった葡萄は数時間後には収穫時の1.5倍まで酵母が復活するのだという。硫黄や銅は菌類に働く為、酵母の動きさえも弱めてしまう。この "洗う” 作業で実際には野生酵母を増やし、更に酵母が働きやすい環境を作り出せるので、スターターと呼ばれる若干の培養酵母さえ使わずに済むのだという。『出回っている培養酵母は若干量でも非常に強く、ワインの質に大きく影響する。それにあれはほとんどがカナダ産なんだ。そんなものを使ってテロワールって言えるかい?』彼等は健全な葡萄を栽培するだけでなく、その健全な葡萄の風味をワインになっても失わないように努力を続けている。
ボルドー液も必要ない新品種
『ビオロジコのワインも良いワインは沢山ある。だが、欠点の多いワインが多すぎる。栽培は勿論、醸造においても何もしないでよい訳ではない。科学的な何かを足したりすべきではないが、"葡萄を健全にワインに変える為の努力” は絶対に必要。欠点や汚染に目をつぶって飲むのが本当の楽しさなのか?』彼等は彼等のアプローチで自然なワインを造っている。もう1つ彼等の自然なワインへのアプローチが始まっているのが "ソラリス”。フィロキセラなどの防ぎようがない病気に耐性を持った葡萄をドイツのフライベルグ大学と共同で研究、古代品種を掛け合わせている訳だが、一切の薬剤を使用しないでも育つ葡萄を隔離された森の中の畑で栽培し、皮ごと発酵させるというもの。既に植樹されていて数年後にはワインができあがるという。